ハワイの自然、文化、歴史がテーマのアロハWEBカワラ版
目次
【バックナンバー】
特集:知る・歩く・感じる
キルト・パラダイス
ハワイ日和
ミノリのカウアイ日記
アロハ・ブックシェルフ
ハワイ・ネットワーク
新定番!ハワイのおみやげ
スタッフルーム
アロハ・ピープル
フラ・ミュージアム通信
【ホクレア号】
ホクレア号横浜到着
ホクレア号での航海生活
ハワイの食卓
スタッフのいちおしハワイ
ハレピカケ倶楽部
アロハ・コラム
パワー・オブ・ハワイ
私のフラ体験
ハワイ日系移民の歴史
アストン・ストーリー
>アイランド・クローズアップ
ハワイ島編
マウイ島編
ホロホロ.ハワイ
カワラ版 トップページ
バックナンバー
クリック!
 
RSS1.0
マイレ
近藤純夫

木にからみついたマイレの葉
 レイはハワイの文化に欠かせませんが、大型のスーパーや百貨店、花屋などで購入できるレイの素材は、ほとんどが外来種です。マイレは、そのなかでただひとつ在来の植物として今日まで広く愛されてきました。*1

  マイレはつる性の低木で、ハワイの森で見られます。つる性ですから、他の木に絡みついて立ち上がる場合もありますが、周囲に対象となる木がないときはある程度自立します。海岸近くから標高2000m近くまでの乾燥した土地、 あるいは適度な湿り気のある土地まで、広範囲に分布しますが、生育環境は年々悪化しており、絶滅が危惧される地域も少なくありません。

 マイレの花の大きさはわずか0.4〜0.6cm。近づかないと花弁の形もわからないほどです。色は淡緑色または淡黄色で、花が終わると黄緑色の実をつけます。この実は熟すと黒っぽい緑色になります。花よりずっと大きく、1.5cmほどになります。


マイレのツルと葉にモキハナの実を撚りこんだレイ
  葉は輪生と言って茎を取り囲むように放射状につけます。事典には2枚から4枚の葉を(輪生で)つけるとありますが、3枚のケースが多いようです。葉は滑らかで光沢があり、裏側は細かな毛(繊毛)が生えているため、少し白っぽく見えます。

 マイレは花が小さく、葉も大きな特徴がありませんから、森のなかでは目立ちません。しかし、葉と茎を潰したり剥いたりすると出る白い樹液にはバニラのような芳香があり、ハワイでは古来から結婚や受勲など重要な儀式の際や、大切な人に捧げるレイの素材としてツルのついたマイレの葉を用いました。


わずか数ミリしかない花
  この樹液はワウケ(カジノキ)で作ったカパ(樹皮から作られた布)などの香りづけとしても用いられました。マイレのほかにもモキハナ(ミカン科の植物)やラウアエ(シダの一種)、イリアヒ(ビャクダン)、カマニ(テリハボク)などが香りづけとして用いられましたが、マイレの香りはとくに多くの人々に認められていました。この樹液の正体はアルカロイドという物質で、マイレが属するキョウチクトウの仲間(プルメリアなど)には必ずあります。一般にこれらの樹液は毒性があります。マイレはそれほど強い毒性はないものの、目や口に入らぬよう注意は必要です。

  学名を Alyxia oliviformis と言い、オリヴィフォルミスには「オリーブに似た」という意味があります。マイレの果実がオリーブに似ていることや、葉がオリーブのように鎖状に繋がることに由来しています。ハワイ諸島のカホオラヴェ島とニイハウ島を除く島々に、人が訪れる前からあった固有の植物のひとつです。


若い実
  とくにフラに関わる者にとって、マイレは数あるハワイの植物のなかでも特別の存在です。マイレは人と人とを結びつけるだけでなく、人と神を結ぶ象徴でもあります。そのため、ハワイの結婚式では、夫婦の絆を未来永劫に守ることを天に向かって契る象徴としてマイレのレイを用います。マイレのレイは輪にせず、逆U字状にかけることが多いですが、妊婦への贈呈など、いくつかの例外を除けば輪にしたマイレ・レイを贈っても失礼にはあたりません。

  マイレはラーアウ・ラパアウ(医療行為)においても重要で、かつては潰瘍、火傷、切り傷などの治療に用いられました。

*1 オーダーすればイリマなどハワイ固有の花を用いたレイも制作してくれる店はあります。

マイレと神話


完熟状態の実
   マイレは、フラの女神として知られるラカのシンボルです。女神ラカは意のままにマイレを動かすことができたと言われています。また、ライエイカワイという神話には5人(5種類)のマイレが登場します。「か弱いマイレ」を意味するマイレ・ハイ・ワレ、「小さい葉のマイレ」のマイレ・ラウ・リイ、「大きな葉のマイレ」のマイレ・ラウ・ヌイ、「香りのよいマイレ」のマイレ・カルヘア、そして「丸い葉のマイレ」のマイレ・パーカハです。マイレ・ラウ・リイはヘイアウ(神殿)に捧げられる植物のひとつですが、このマイレは香りが長持ちすると言われます。

 ハワイ語辞典の著者のひとりであるメアリー・カヴェナ・プクイがこんな物語を紹介しています。


枝から樹皮をはがす
   昔ハワイ島のカウ地区にモーリーという若く美しい女性がいました。父親は彼女の結婚相手は漁師と決めていました。有能な漁師は暮らしぶりも良いし、働き者だからというのがその理由です。あるとき、悪知恵の働く漁師があらかじめたくさんの魚を確保しておき、自分が有能な漁師であるとモーリーの父親に信じこませ、婿となりました。しかし、結婚すると彼は働きに出ず、家でぶらぶらしているだけでした。哀しみに沈んだモーリーはマイレのレイなどで正装すると、ワイアフキニの崖から身を投げたのでした。彼女が死んで数年後、強風の吹き荒れる日には彼女の嘆き悲しむ声が聞こえるようになりました。そんな日はマイレの香りが強く辺りに漂い、もしその場にマイレ・レイを身につけた人がいると、地に叩きつけられると噂されました。

 このような神話を背景に、カウアイ島のハーラウでは、お供え物のひとつとして必ずマイレを祭壇(クアフ)に捧げます。また、使用するマイレを摘むとき、ハーラウの生徒たち(ハウマーナ)は、神々に許しを乞うチャントを唱えました。そしてフラの儀式を終えたあとは祭壇を解体し、使用した葉や枝は祈りとともに海や深い川の淵に沈めました。

 トップページはカウアイ島に自生するマイレで、若い実をつけた状態です。次回はハワイではペレと同じようによく知られたマウイについてお話しします。

【ハワイの自然】
 ダイヤモンドヘッドに登ろう (1) 2002年8月1日
 ダイヤモンドヘッドに登ろう (2) 2002年8月15日
 火山と溶岩 (1) 噴火に伴う溶岩 2002年11月7日
 火山と溶岩 (2) ハワイアンと溶岩 2002年11月21日
 火山と溶岩 (3) マグマとその動き 2003年11月20日
 火山と溶岩 (4) プレートの移動 2003年12月4日
 火山と溶岩 (5) 島の誕生と消滅 2003年12月18日
 マウナケアと天文台 (1) 2003年2月20日
 マウナケアと天文台 (2) 2003年3月6日
 渓谷の魅力 (1) ワイピオ渓谷 2003年10月2日
 渓谷の魅力 (2) ワイメア渓谷 2003年10月16日
 渓谷の魅力 (3) ワイポオ滝トレイル 2005年6月16日
 西マウイ・北海岸の自然 (1) 2003年7月3日
 西マウイ・北海岸の自然 (2) 2003年7月17日
 風と雨と虹の話 (1) 2002年9月5日
 風と雨と虹の話 (2) 2002年9月19日
 マカプ・ウ岬を登る 2004年4月15日
 トレイルを歩く(1) マノア滝トレイルを歩く 2004年5月6日
 地底の世界 (1) 2004年9月2日
 地底の世界 (2) 2004年9月16日
 観光洞窟 2004年10月7日
 トレイルを歩く(2) ペペオパエ・トレイル(モロカイ島) 2004年10月21日
 トレイルを歩く(3) ナーパウ・トレイル 2004年11月4日
 滝のある風景(1) レインボー・フォールズ 2005年2月3日
 滝のある風景(2) ワイルア・フォールズ 2005年2月17日
 滝のある風景(3) アカカ・フォールズ 2005年3月3日
 キラウエア (1) 2005年4月7日
 キラウエア (2) 2005年4月21日
 キラウエア (3) 2005年5月19日
 マウナ・ロア 2005年8月18日
 ハレアカラ 2005年9月1日
 トレイルを歩く(4) メネフネ神話発祥の山に登る
(ノウノウ山イースト・トレイル)
2006年2月2日
 トレイルを歩く(5) ポロル渓谷 2006年5月18日
 キパフル・ウォーク 2006年6月1日
 温泉 2006年8月3日
 ピヘア展望台(カウアイ島) 2007年11月15日
 グリーンサンドビーチ散策 2007年12月20日
 トレイルを歩く(6) ワイアコア・ループ・トレイル 2008年6月19日
 ハレマウマウ 2008年9月18日
 マウイ島の山々 2008年10月16日
 モロカイ島の自然(1) 2008年11月20日
 モロカイ島の自然(2) 2008年12月18日
 ラナイ島 2009年1月15日
 カホオラヴェ島 2009年2月19日
 ワイルク川をさかのぼる 2009年3月19日
 パワースポット(1) 2010年1月21日
 パワースポット(2) 2010年2月18日
 パワースポット(3) 2010年3月18日
 キラウエア・イキ・トレイル 2010年7月15日
 ハワイの空 2010年11月18日
【ハワイの動物】
 鳥たちの世界 (1) 2003年1月16日
 鳥たちの世界 (2) 2003年2月6日
 サンゴ礁のサカナ (1) 2004年2月19日
 サンゴ礁のサカナ (2) 2004年3月4日
 サメと神話 Mano 2005年3月17日
 シー・ライフ・パーク 2007年9月20日
 サンゴ礁のサカナ (3) 2007年10月18日
 有害動物 2009年4月16日
 > その他の特集は、こちらの「バックナンバー」からご覧いただけます。

個人情報保護の方針 クッキーの利用について
Copyright (C) 2002-2003 PACIFIC RESORTS.INC., All rights reserved.