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ハワイ島のヒロに近いサドルロードの夕景 |
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ハワイで楽しみなもののひとつにサンセットがあります。ハワイ島のカイルア・コナやオアフ島のサンセット・ビーチ、モロカイ島のパーポーハク・ビーチなど、みなさんそれぞれに想い出のサンセットの名所があることでしょう。ところでなぜハワイのサンセットは心に染みいるほど美しいと思えるのでしょうか?
日本でも美しい夕景はありますが、ハワイほど頻繁に見られるわけではありません。理由のひとつに、きれいな大気(空気)があります。何よりもまず晴れていなければ太陽は見えません。たとえ上空が晴れていても、地平線や水平線、あるいは雲海に陽が沈む方向に雲があればやはり美しい夕陽は望めません。反対に、上空に厚い雲があっても、陽の沈む空間が晴れていれば、それはそれでドラマチックなサンセットが見られます。日本は意外に雲が多く、地平線や水平線、山の稜線の彼方まで晴れ渡っていることはそれほど多くありません。
では、晴れてさえいれば美しいサンセットが見えるかというと、必ずしもそうではありません。季節も微妙にからみます。地球上には一定の厚みで大気が取り巻いています。頭上にあれば大気の厚み分を通過して太陽光線が注ぎます。しかし、太陽が傾いて地平線や水平線に接近すると、大気を水平に近いラインで横断して観察者である人の目に届くため、光の大気中の道のりは長くなります。この「大気のなかを長く通過する」というのが、空を赤く染める大きな要因となります。
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モロカイ島パーポーハク・ビーチの厚い雲から洩れる夕陽 |
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目には見えませんが、空気中には酸素や窒素の分子が漂っています。太陽光はこれらの分子に当たり、少しずつ拡散します。光のなかの色の要素のうち、波長が短い青色や紫色の光は比較的早く散乱し、波長の長い赤色の要素が多く残ります。この結果、大気のなかを長く通るほど、青み要素が減り、空は赤色の光に満たされるようになるのです。
しかし、空気中に埃や塵、雲などが多い春先や、上昇気流が発生し、入道雲ができて水蒸気の多い夏場は、光の赤い要素も遮断されてしまい、夕焼けが発生しにくくなります。結論としては、雲のような水蒸気の塊が空高くにあり、地表近くが澄みわたっている秋や冬場の方がドラマチックなサンセットが出現する確率が高くなります。台風一過の空に美しい夕焼けが出現しやすいのは、塵や水分が一掃され、空気中の酸素や窒素分子が整然と並んでいるからです。このような状態では光の乱反射が少なく、地平線(水平線)から天頂にいたるまで、黄色、オレンジ色、白、青色、紺色と、美しいグラデーションを表現する条件が整います。また、空気が澄みきっていると、光のコントラストが強調され、より鮮やかな色彩が広がります。
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カウアイ島ワイメアの海岸に広がる真っ赤な空 |
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サンセットのときの空の色は、見る場所でも少しずつ変化するような気がします。モロカイ島の西端とオアフ島の東端では黄色味が強く、カウアイ島の南部やハワイ島西部では赤味が、ハワイ島南部ではオレンジ色が印象的に見えます。これらはもちろん、観察したサンセットがさまざまな気象条件の結果、たまたまそのような色合いだったということを意味しますが、地域性に根づいた部分もあります。たとえば、各島の東北部では北東から吹きつける暖かく湿った貿易風のせいで大気はかなり湿り気を帯びています。この水分が太陽光の到達を阻害するため、赤に近い色は出にくくなります。一方、各島の西南部では、山岳地帯で雨を落とすために空気は乾燥し、不純物が減少して澄んだ状態になります。その結果、真っ赤なサンセットを見る確率が高くなるというわけです。マウイ島のハレアカラ山頂やハワイ島のマウナ・ケア山頂に世界中の巨大天文台が集中しているのも、ハワイ諸島が飛び抜けて透明感の強い大気に覆われていることと無関係ではありません。
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ハワイ島ケアウホウのサンセット |
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サンセットの美しいハワイ諸島も冬場は雨が多くなり、降雨のないときでも湿度が高いことが多いため、魅惑的な夕焼けの発生は少なくなります。ただし、雲が低い位置にだけ垂れこめているようなときは雲海の上に出てみましょう。飛行機から見るサンセットと同じように、金色に輝く美しい空を堪能できます。
と、ここまで書いて来ましたが、理屈通りのサンセットが見られるわけではありません。自然は予測できないさまざまな条件でつねに変化しますから、思ってもみなかった夕焼けに出会える可能性はあります。すべてが予測可能なサンセットでは、なんだか興醒めですよね。
最後にサンセットの名所をいくつか挙げておきます。ハワイ滞在中は空が晴れ渡り、美しい夕焼けを堪能できることをお祈りしています。
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