ハワイの絵画
近藤純夫 |
絵画や版画を通じて、ハワイの文化や自然をより深く楽しみたいものです。今回はハワイで知られる画家のなかから、比較的新しい人たちを紹介したいと思います。そのような画家の作品は、たとえばハワイ州立美術館(Hawaii State Art Museum)やホノルル美術館(Honolulu Academy of Arts)、コンテンポラリー・ミュージアム(The Contemporary Museum)などでいつでも楽しめます。また、ワイキキやダウンタウンを中心とした画廊もお勧めです。グリーン・ルーム(GREENROOM Hawaii)やワイランド・ギャラリー(Wyland Galleries)などでも、流行の画家の絵を楽しめます。
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ヘザー・ブラウン / Heather Brown
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サーフボードとウェーブを描いた作品 |
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ヘザー・ブラウンはいまもっとも人気の高い画家のひとりで、ステンドグラスを思わせるタッチに個性があります。カリフォルニア出身の彼女は、わずか5年ほど前から絵を描きはじめましたが、すぐにサーファーの間で人気となり、その後、広く名前が知られるようになりました。彼女の伝説ともなっているのは、絵を描きはじめてわずか1年で、ハワイ最大のミュージック・イベントであるコクア・フェスティバルのポスターを任されたということです。絵のうまさより何より、この強烈な個性は、他のどのアーティストとも異なり、人の記憶に残ります。2009年には東京の代官山に彼女のギャラリーがオープンしています。
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ペギー・ホッパー / Pegge Hopper
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ゴーギャンを彷彿とさせるクラシックな表現 |
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ペギー・ホッパーの絵はハワイのホテルでもよく利用されているので、すでに知っている方も多いでしょう。彼女もヘザー・ブラウン同様、カリフォルニア州出身です。美術学校卒業後、最初の作品がニューヨークで認められたのをきっかけに、ミラノに移り、2年間ルネッサンス期の絵画を学びました。ハワイに移り住んだのは1963年のことです。画家としての商業活動はせず、広告会社に勤めました。しかし、1970年になると再び筆を取り、作品を描きはじめます。それらの作品は高く評価され、ハワイだけでなく、シカゴやロスアンゼルス、シアトルなどの現代美術館に展示されています。そして1983年、彼女はダウンタウンに自分のギャラリーをオープンさせました。いまではホテルだけでなく、航空会社や客船などのアートとしてなくてはならない存在となっています。
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ディートリッチ・ヴァレツ / DIETRICH VAREZ
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神話に基づく表現の多いヴァレツの作品 |
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ヴァレツの作品(版画)はペギー・ホッパーと同じくらいハワイのさまざまな場所で見かけます。作品として額に納められたものだけでなく、書籍やハワイアンシャツ、コーヒーマグなど、さまざまなものに描かれています。ヴァレツは8歳のとき、生まれ故郷のドイツからハワイに移り住みました。彼の作品を見るとすぐにわかるように、題材の多くをハワイの自然や神話、文化に得ています。現在、やはり画家である妻とともにハワイ島のボルケーノビレッジに住み、創作活動を続けています。ちなみに、スパリゾートハワイアンズに来年1月オープン予定の新ホテル(モノリス・タワー)では全フロアに彼の作品が展示されます。
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ハーブ・カーネ / Herb Kāne
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タヒチやマルケサスから航海してきた人々が見つけた新世界(ハワイ) |
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カーネはハワイの歴史や神話を語るときに欠かせない画家と言えます。作品は可能な限り史実に忠実に描かれ、ディテールにもこだわっています。キャプテン・クックがハワイ島ケアラケクア湾で殺害されたときの絵では、殺害された年月日を調べ、そのとき潮位がどの程度だったかにまでこだわりました。絵の巧さだけでなく、科学的な事実についても強いこだわりを持っているのです。その精密さが評価され、ナショナルジオグラフィックをはじめとするさまざまな科学雑誌で活躍しました。
カーネはハワイ島のヒロに生まれ、ワイピオ渓谷と本土のウィスコンシンで育ちました。1953年にシカゴ大学で美術の博士号を取ったあとは、深くハワイに関わり続けました。2008年にはシカゴ・アート・インスティチュートで教鞭を執っています。また、ポリネシア航海協会のプロジェクトにも関わり、カヌーデザインを行っていました。
彼の功績はハワイで広く評価され、1984年には人間国宝に選ばれています。今日では書籍だけでなく、郵便切手などにもその作品は使われています。残念なことに、カーネは今年3月永眠しました。
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クリスティー・シン / Christie Shinn
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おそらくはハレイヴァのライフ・ガードを描いた作品 |
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シンはハワイ(とカナダ)で活躍する人気画家で、ポップ・アートに属するひとりです。とくに海やサーファーに関する題材が多く、なかでもノースショアを彷彿とさせるものを多く発表しています。イラスト調の彼女の作品は、時間が止まったようなのどかな世界を表現することと言えるでしょう。いずれの作品も、昔どこかで見たような古き良きハワイを感じさせます。
彼女は絵の教育を受けているわけではありませんが、その結果、独自の世界を演出することに成功したと言えるでしょう。最初は単なる素人絵のように見えても、なつかしささえ感じさせる独特の世界観に共鳴できるはずです。
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マイク・フィールド / Mike Field
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月夜に浮かぶ島と樹木の幻想的なシーン |
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グァムに生まれ、ハワイで育ったマイク・フィールドは、ロスアンゼルスで美術を専攻し、絵画だけでなく、グラフィック・デザインなどを学びます。影絵を彷彿とさせる彼の作品の特徴はこのときに修得したものです。彼が描くのはハワイの自然が多く、なかでも海やサーファーの作品は、ポップで鮮やかな色合いが高い人気を呼び、ポスターとしての人気も高いひとりです。
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次回はマウイ島ハナを紹介する予定です。
表紙はクリスマスカードに描かれたハワイの絵です。 |
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