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ラナイ島の自然(1)
近藤純夫
パイナップル畑の跡地
パイナップル畑の跡地
 ラナイ島は観光客が訪れることのできる島としてはもっとも小さく、人口は3000人足らずしかありません。西欧との交流が始まる前からそれほど大規模な集落はありませんでしたが、1882年にジョン・キドウェルという人が南米からパイナップルを取り寄せ、農産物として定着させようとしました。有名なドールのパイナップル会社がプランテーションを開いたのはその約20年後の1901年です。

 それからさらに20年ほど経った1922年にハワイアン・パイナップル・カンパニーがラナイ島をそっくり購入し、ここに一大パイナップル畑を展開しました。その後、パイナップル産業は隆盛をきわめ、1940年代には世界の生産量の8割を占めるまでになりました。しかし、サトウキビや他の農産物と同様、パイナップルはアジア諸国に価格競争で敗れ、少しずつ衰退していきました。そして1994年にはついに生産を終了し、跡地は今日に至るまで荒野が広がっています。

 今日、ラナイ島にはほとんど産業と言えるものがありません。島の経済を支えているのは、老舗の地元ホテルと、2つの高級リゾートホテルです。町は島の中央に位置するラナイシティーしかありません。一歩町から出ると、滅多に人に会うことはないほど、閑散としています。ラナイシティーと各ホテル、空港、それに南の海を結ぶ道は舗装されていますが、それ以外はほとんどが未舗装で、訪れる人はそれほど多くありません。見方を変えて言うなら、手つかずの自然がまだ豊富に残されているところと言えるでしょう。今回はそんなラナイ島の、南西部に広がる自然を紹介します。

マネレに隣接するフロポエ湾
マネレに隣接するフロポエ湾
フロポエに残るペトログリフ
フロポエに残るペトログリフ

 島の南西部に位置するマネレ・ベイは、もっともアクセスのよい場所のひとつです。ここにはリゾートホテルがあるため、ラナイシティーから海岸まで舗装道路をドライブすることができます。マネレ・ベイにはフィッシャーマンズ・トレイルがあり、トレイルの終点となる岩場の上からはエメラルドグリーンの海と、遠くにマウイ島ハレアカラを遠望できます。トレイルの名前の由来は、かつてここに漁師たちの仕事場があったからです。

 フロポエと名づけられたこの土地は、いまから800年ほど前に漁師たちに使われていました。岩場から魚影を確認したり、漁具の補修をしたのです。漁師たちは豊かな魚影を確認するとこの地に数日間とどまって漁を行い、それから山上にある彼らの集落に戻りました。写真に写っている石垣はいまから100年ほど前のもので、当時の漁師がカヌーを保管するために築いたカヌー小屋(ハーラウ・ワア)の跡です。

カメハメハ大王の住居跡
カメハメハ大王の住居跡
パラオアの展望台
パラオアの展望台

岩場をたどるトレイルと灯台
岩場をたどるトレイルと灯台

 島の最南部にあたるパラオア岬の名前はパラオア(マッコウクジラ)に由来します。湾の北側はカウノルと呼ばれ、ここにもかつて集落がありました。この地の住居跡はおそらく、ハワイ諸島でもっともはっきりと過去の遺跡を残しているところです。そのため、ここは国の歴史建造物(跡)に指定されています。遺跡の数は100を超え、住まいだけでなく、カヌー小屋や墓地の跡、ペトログリフ、ヘイアウなども残されています。遺跡の保存状況がよく、多岐に渡っているのは、15世紀から近年(19世紀末)まで人が住んでいたためです。ラナイ島の聖地として崇められていただけでなく、カメハメハ大王の住まいのひとつがこの地にあったことも、この地が大切に扱われた理由のひとつと言えるでしょう。また、マネレ・ベイと同じく豊かな漁場であったため、漁師にとっても重要な土地でした。

 パラオア一帯を巡るトレイルがありますが、道は険しいので小さな子どもには向きません。それ以前に、ここへ到達するまでのルートはかなりわかりにくいですし、悪路のため、ジープタイプの車でなければ道を踏破することもできません。ハードルの高い場所ですが、歴史に興味のある人には、与えられる満足度も大きなものがあります。

カーネアプアの岩(手前)
カーネアプアの岩(手前)

 写真左のほぼ四角形の岩は、カーネアプアと呼ばれます。昔カーネアプアという神がカウノルに暮らしていて、兄であるカーネとカナロアの神に、島の最高峰であるラナイハレ山頂の水を汲んでくるように言われます。しかし、兄たちの期待を裏切るようなことをしたため、ラナイ島に幽閉されてしまったのでした。カーネアプアは悲しみのあまり、ついには岩となってここに残ったと言われます。

  トップページの写真はマネレにあるフロポエの集落跡です。次回はラナイ島の自然(2)と題し、島の北部に広がる自然についてお話しします。



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