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ハワイの小説(2)
近藤純夫
ハワイを題材にした小説の第2弾です。時代は少し遡りますが、父親がハワイ出身の片岡義男や、数多くのハワイ系作品を上梓している喜多島隆など、かつてマスコミでも大きく取り上げられた古い作品を紹介します。一部は絶版となっていますので、図書館などを活用してお読みください。なお、片岡義男の
『時差のないふたつの島』
については、作者の許可の元、テキスト版が公開されています。
楽園ニュース
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『楽園ニュース』 デイヴィッド・ロッジ 白水社
ユーモアとウィットが散りばめられた英国一家をはじめとするハワイツアー参加者の物語です。ロンドンからの格安ツアーに参加してハワイにたどり着いた主人公父子とツアー一行は、価値観や性格の違いからさまざまなハプニングやアクシデントを起こしますが、騒動を通じてハワイの自然と文化はもちろん、人のあり方や人生そのものについて、さまざまなことに思いを至らせます。著名な観光スポットの紹介は実にスタイリッシュで、リピーターにも魅力的に描かれています。また、物語のなかで起きるシリアスな諸問題についても、つねに前向きに捉えて解決していこうとする登場人物たちの生き方に共感する点が多いことでしょう。
ワイルドミートとブリーバーガー
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『ワイルドミートとブリーバーガー』 ロイス・アン・ヤマナカ 東京創元社
ハワイ島のヒロに暮らす日系人のラヴィ・ナリヨシは、美しく変身したいという願望を抱えた女の子です。しかし現実の生活は理想とはほど遠いものでした。学校ではピジン英語と呼ばれる訛りのひどい言葉を注意され、内に引きこもりがちの彼女は、下校すると、一家総出の農作物の収穫に駆り出されるという毎日でした。彼女の唯一の友だちは女の子のようになよなよとしたジェリー。なぜか波長が合い、いつも2人で遊んでいました。ラヴィを含むアジア系の子どもたちは白人のようになりたいと望みます。金髪で青い目で脚が長くて…と、彼女は羨みますが、おそらくそれは当時はまだはっきりと残っていた人種差別のせいでもありました。白人社会は金持ちで優雅な暮らしをしていたので、自分たちが惨めに見えたのです。そのくせ、フィリピン系を見下したり、悪ふざけをする日系人を「ジャップめ!」と、身も蓋もない言葉で罵ったりします。ハワイという土地で彼女たち日系人の置かれたさまざまな事柄を実に印象的に展開したお勧めの作品です。
原書はピジン英語のオンパレードです。よりリアルに彼らの世界を体験したい方はぜひ原書にも目を通してください。
時差のないふたつの島
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『時差のないふたつの島』 片岡義男 新潮文庫
物語の書き出しにプリモ・ビールが出てきます。その昔、アイエアで作られていた時代の絶品ではなくてカリフォルニアで生産されていた時代のものです。いまのハワイの人たちはその味を懐かしみます。その後プリモは姿を消してしまいましたが、数年前に復活。しかし、「カリフォルニア産とはぜんぜん違う」と言って彼らはいまのプリモを嫌います。ぼくたち日本人観光客にはわからない微妙な線引きがハワイの文化には散りばめられていて、片岡義男の作品にはその微妙な感じがあちこちに出てきます。登場するのはほとんどがローカルな場所。作者は噛みくだいた説明をしないので、どの場所にもちょっとした不消化が残ります。それが気になって、今度ハワイへ行くときは必ずそこを訪れてみたいという気にさせるところが、片岡作品の真骨頂と言えるでしょう。
プルメリアの日々
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『プルメリアの日々』 ジェシカ・サイキ 西北出版
第二次世界大戦が勃発する前のハワイ島を舞台にした日系人社会の物語を17の短編に綴っています。「写真花嫁の到着」では、写真花嫁としてハワイへやって来る女たちを待つ若い男ふたりの心の不安を伝えます。彼らの連れ合いは偶然にもコトという同じ名前でした。名前は同じでも性格の異なるふたりを迎える男たち。彼らの反応と対応が実にしみじみとしています。「小さな盗み」では、外観も収入も価値観も異なる有色人社会と白人社会とのギャップに傷つきながら、やり場のない怒りを、盗みという行為で消化しようとする女の子の物語です。しでかしたことの、あまりの大きさに耐えかね、彼女が行ったこととは…。大戦前後の日系人社会を、血の通った文章で伝えてくれる秀作です。
君といたホノルル
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『君といたホノルル』 喜多嶋隆 角川文庫
主人公の沢田麻里は新米の探偵です。彼女は太極拳の師範である至さんから相談をもちかけられます。日本食堂にいやがらせに来る連中を、太極拳で追い払おうというのです。彼女がいやがらせの実態を調べ始めると、食堂の主である老女タマエさんの意外な過去を知ります。何気ない気持ちで行った行動がその後の人生を決めてしまう。そこには成功もあれば挫折もある。長い人生の先にある幸せの意味を改めて考えさせる、ちょっとほろ苦い結末が深く心に残ります。ローカルを心から愛する主人公の行動を通じて、ハワイの伝統文化の魅力を知らされるという効果もあります。
海から来たサムライ1、2
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『海から来たサムライ1、2』 矢作俊彦・司城志朗 角川書店
ハワイの王朝史に興味のある人にはとくにお薦めしたい一作です。1810年にカメハメハ大王(1世)によって誕生したハワイ王国は、30年後の1840年に新憲法を発布して立憲君主国家となりました。その後、1874年の第7代カラカウア王の時代になると、アメリカ合衆国の干渉が激しくなります。ハワイの反米勢力は英国に留学中の王女カイウラニを呼び戻してその後に備えます。
ここまでは歴史的な事実ですが、そこから物語は始まります。帰国したカイウラニ王女は行方不明となり、彼女を擁立しようとしていた愛国党のウィルコックスたちは窮状を打開するため、日本へ助けを求めます。物語の主人公である大日本帝国海軍士官、鹿島丈太郎は明治天皇の親書をカイウラニ王女に届けるため、政府が手配したメンバーとともにハワイへ向かったのでした…。史実を巧みに織り込んだ長篇は読み応え十分です。
トップページはビーチで読書をする地元の人です。次回はラナイ島唯一の町であるラナイシティーを紹介します。
本の世界 (1) マーク・トウェイン
2003年5月1日
本の世界 (2) ロバート・ルイス・スティーブンソン
2003年5月15日
本の世界 (3) イザベラ・バード
2003年6月5日
ハワイの小説 (1)
2012年3月15日
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