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パナエヴァ・ズー(ヒロ動物園)
近藤純夫
 ハワイ島のヒロ市郊外にあるパナエヴァ動物園(Pana'ewa Rainforest Zoo and Gardens)はボランティアが中心となって維持管理する無料の施設で、1979年にオープンしました。5ヘクタールほどの園内は熱帯樹林が多く、動物舎をゆったりと配置しているせいか、自然のなかで動物に出会うような雰囲気を感じます。

人を怖がらず、マイペースで行動するクジャク
人を怖がらず、マイペースで行動するクジャク
ポリネシア人がハワイ諸島へ連れてきたブタ
ポリネシア人がハワイ諸島へ連れてきたブタ

ベンガルトラのナマステ
ベンガルトラのナマステ
 動物園には60種ほどの動物と、100種ほどの植物が展示されています。ここでもっとも人気のあるのはナマステという名のトラです。外部より寄贈されたベンガルトラで、生まれはラスベガスという都会っ子です。ナマステはアルビノ種であるため色素が抜け、白色をしていてます。そのため、ホワイトタイガーと呼ぶ人もいますが、「白い毛を持つトラ」という意味で、白色種のトラがいるわけではありません。トラ舎は動物舎の半分以上を占めるのではないかというほど広大ですが、ナマステは老齢(1998年生まれ)のせいか、ところ狭しと駆け回るわけでもなく、餌の時間以外はほぼ写真のような状態です。(笑)

 この動物園でのお勧めは鳥類です。ハワイ固有種の、ハワイノスリ(イオ、Hawaiian Hawk)、コミミズク(プエオ、Short-Eared Owl)、ハワイガン(ネネ、Hawaiian Goose)などが見られます。この他にハワイミツスイ類も何種類かいたのですが、現在はいません。いずれも小さな檻に入っていて少しかわいそうな感じもします。ナマステにあれほど広大な場所を提供しているのですから、これらの猛禽類やネネにも大きなケージを用意してほしいものです。

プエオ
プエオ
イオ
イオ

ネネ
ネネ
 ネネを含む大型の鳥は風切り羽根をカットし、遠くへ飛べないようにしてあるので、園内外を自由に歩き回っています。上の写真のようにクジャクがピクニックテーブルで毛づくろいをしているのを間近で見ることもできます。

 このほかにも、アクシスジカ、ジャコウネコの一種であるビントロング(クマネコ)、アカハナグマ、ノヤギ、オオアリクイ、アライグマ科のキンカジュウ、ブタ(プアア)、ナマケモノ、熱帯性のリスなどが飼育されています。見逃してならないのは毎週土曜日に開催される触れ合い動物コーナーです。ヤギやモルモットなどのほか、ポニーやリャマなどがいますが、このほかになんとネネやイオにも触れることができるのです。

サトウキビ
サトウキビ
 この動物園は「ガーデン」の名が付いていますが、植物も見逃せません。先住のハワイ人文化に重要な働きをした植物のひとつであるコショウ科のアヴァ(カヴァ)や、マイア(バナナ)、コー(サトウキビ)、カロ(タロイモ)、キー(ティ・リーフ)、ククイ、ミロ(サキシマハマボウ、トウユウナ)、ノニ(ヤエヤマアオキ)、オヒアレフア(ハワイフトモモ)、ウル(パンノキ)、ハープウ(木生のシダ)など、ハワイの伝統植物のいくつかが展示されていますし、甘い香りを漂わせるプアケニケニやタコの脚のように見えるオクトパスツリー、メキシコ枝垂れタケ、ハマカンゾウ、モンステラ、サゴヤシなど、ハワイ内外の外来植物も入口付近を中心に展示されています。また時期がきわめて限られますが、世界最大の花として知られるショクダイオオコンニャクも、運が良ければ見られるでしょう。ただし、7年に1度、2日間だけの開花です。

 3つ目の特徴は水生植物と両生類のコーナーです。スイレン、オオオニバスが漂う大きな池には、世界の珍しいカエルなどの両生類がいます。また、入口わきには小規模ながらモナークバタフライなどの昆虫館もあります。

園内見取図
園内見取図
 無料でこれだけのものを見られる動物園はとても貴重です。満足できたなら帰るときにドネーション(寄付)をして、この動物園の安定的な運営に力を貸してあげてください。

 最後にパナエヴァという名称についてお話しします。海から山まで途切れることなく森林の続く土地を、ハワイ語ではパナエヴァ(pana'ewa)と呼びました。ヒロの海からマウナ・ケアの森林限界まで途切れることなく続く広大な森は、かつては神々の住む未知の世界でした。それとともに、人々に資源を供給する貴重な存在でもあったので、祈り(チャント)にも謳われるほどでした。

 園内には子供用の遊戯施設のほか、さまざまな催し物も開かれており、ヒロの住人にとっては母と子の社交場のような役割も占めています。

住所:800 Stainback Hwy, Hilo, HI 96720
電話:808-959-9233
開園日:クリスマスと正月を除く毎日朝9時〜夕方4時
サイト:http://www.hilozoo.com

トップページは芝生でくつろぐナマステ君です。
次回はカウアイ島のマカウワヒ洞窟公園(Makauwahi Cave Trail)を紹介します。



フラの花100「フラの花100─ハワイで出会う祈りの植物」(平凡社)
全192ページ 1,890円(税込)


フラにまつわる100のハワイやポリネシア由来の伝統植物・花々を厳選し、それぞれの植物や花々の文化的背景、歴史、伝承などをわかりやすく解説した楽園ハワイの植物ガイドです。

フラやキルト、レイなどはもちろん、ハワイの文化を知りたい人には是非ハワイにお持ちいただきたい一冊です。この本を片手に旅をすれば、きっとハワイがもっと好きになることでしょう。


アロハカワラ版「アロハブック・シェルフ」でも紹介しています
>>> フラの花100─ハワイで出会う祈りの植物

【ハワイの動物】
 鳥たちの世界 (1) 2003年1月16日
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